読書感想『告白』

1.書籍情報

ジャンル:ミステリー サスペンス 学園
鑑賞履歴:2021/7/1(文庫)
公式サイト:公式
wikipedia:wiki
作者:湊かなえ
制作年:2008年
制作国:日本
ページ数:268
発行元:双葉社
受賞歴:2008年度週刊文春ミステリーベスト10 第1位
    2009年度本屋大賞

2.感想

※※※ 以下、ネタバレありです! ※※※

ひたすら憎しみと恨みが渦巻く一冊です。
そこから生み出される復讐といじめと家庭内暴力と殺人とその他、ありとあらゆる人を貶める行為の数々。
胸糞悪い小説と言われればそれ以上に言いようのない本ですが、何故か最後まで読み切ってしまうのはそれだけの物がこの本にあるから。だと思います。

読ませるポイントはいくつかあると思います。
なんだかんだと言っても復讐する側の気持ちに同情出来ないとは言えず、復讐される側に対してもそれを当然と感じる心情的な部分。
復讐の手段として、HIV感染した方の血液を飲み物に混ぜ、検査まで3カ月、発病まで数年という長期間な上、不確実な形で設定された仕掛け。
結果の経緯に対して複数人の視点から語られており、当人にしか知りえない内情を遅れて明らかにしていく設定。

本当に、個々が言っている事ややっている事は惨たらしい。としか言えないのですが、いざ当人達の本音を聞いてみるとちょっと同情の気持ちも沸いて来ないことはないです。
生い立ちや、育てられ方、思春期の劣等感や、本人達の立場・能力では回避できない事象への抗い等。
渡辺修哉に関してはそれはなかったですが、下村直樹や北原美月に関してはちょっとはあるか?いや、やっぱり同情なんて思いはないかな?
森口悠子に対してはどうでしょう?
これは娘を殺された恨み、復讐というのは判らなくはないです。
自分に娘がいるからというのは抜きにしても、司法や警察には頼らず、自分の意志で渡辺修哉や下村直樹の人生をめちゃくちゃにしてやりたい。と、そんな思いに至っても仕方がないように思います。

ラストを除けばその復讐の過程を森口悠子の存在を感じさせずに果たしていく話になるのですが、ラスト、森口悠子が登場し、如何にしてこの復讐を成功させる為に裏で操っていたか?そして、更に最後の復讐で何をしでかしたか?が語られると、より一層、この本の毒々しさが増します。
そして、やっぱり胸糞悪いけれど凄い物を読んだという気持ちになります。

憎しみにまみれ、それで復讐を果たしていく話は多くありますが、ここまで復讐者の存在が消され、また、その手口に感情を感じさせずに淡々と実行してくストーリーは珍しいかと思います。
それを考えると、好き嫌いを通り越して、凄い物読んだ。という読み応えを感じさせてくれる一冊かと思います。

3.評価

個人的な好き度合い:★★☆ (2/3)
※ ★☆☆~★★★が凄く面白いで、普通に面白い以下は全て☆☆☆です。

かなり面白かったです。
機会があればまた読みたいです。

世間の評価は以下のような感じです。

amazon4.2

面白いという方の意見:

・最後まで一気に読ませてしまう力のある本。
・イヤミスの女王らしい作品 ※イヤミス:嫌な気持ちで終わるミステリー作品
・事実が少しずつ小出しにされていく展開が面白い。
・作中の伏線の貼り方と回収が見事。
・ラストが衝撃的。最後の言葉も恐怖感が凄い。
・自身の醜いと感じる部分が共感してしまう。
・映画と同じ空気感で読める。

面白くないという方の意見:

・細かい部分の説明がなく突っ込み所が多い。
・文章表現として稚拙さが目立つ。
・不愉快な気持ちになる

世間の評価を見ての印象:

イヤミスと言われる作品なだけに反対意見も多いのかと思ったのですが、意外にそれは少なく感じました。
嫌な人は序盤で気付いて止めるからかもしれませんが。。。
全体的に登場人物に対しての共感は少ないものの、とは言え一気に読んでしまったという意見が多く、寧ろ読者の方自身がその事実に戸惑っている感じでした。
僕も同じ意見で、基本的にドラマ派なので登場人物の気持ちが追えないと本に入りきれないのですが、この作品に関しては有無を言わさずという面白さがあったように思います。

細かい部分の辻褄の合わなさ、という指摘も多かったですが、個人的にその辺りは気付いてもあまり重視していないので気にならない方です。
どうやって桜宮先生が牛乳をすり替えたんだろう?等、それよりも話のテンポや勢いの方を重視してしまいます。

amazonで書籍を購入する。

4.お勧めしたい人

こんな方にはお勧めの小説かも知れません。

・読後に嫌な気持ちになる小説が好きな方。
・学校内のいじめを扱った小説を読みたい方。
・ラストが衝撃的な小説を読みたい方。
・精神的な病を扱った小説を読みたい方。
・社会問題に切り込んだ小説を読みたい方。
・胸糞キャラが描かれる小説を読みたい方。
・家族を失った悲しみが描かれた小説を読みたい方。

映画版の視聴、購入はこちら。

6.小説関連記事 紹介

ブログランキングに参加しておりますので、よろしければバナークリックで応援をお願いします。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

コメント

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
最新情報をお届けします。
タイトルとURLをコピーしました