映画感想『まほろ駅前多田便利軒』

1.映画情報

ジャンル:ドラマ
鑑賞履歴:2021/6/10(U-NEXT)
公式サイト:https://www.asmik-ace.co.jp/lineup/2172 (配給元サイト)
      http://mahoro-movie.jp/ (シリーズ最新作『まほろ駅前協奏曲』の公式サイト)
wikipedia:wiki
監督:大森立嗣
制作年:2011年
制作国:日本
配給:アスミック・エース
メインキャスト:瑛太 松田龍平 柄本佑 高良健吾 岸部一徳 本上まなみ 松尾スズキ
スタッフ:脚本(大森立嗣) 音楽(岸田繁)
原作:『まほろ駅前多田便利軒』 三浦しをん 2007年 日本
受賞歴:
予告動画:

映画『まほろ駅前多田便利軒』予告編

2.感想

※※※ ネタバレありです ※※※

公開間もない頃に観て以来、久しぶりの鑑賞でした。
原作は読んでいます。

30代で観た時の印象は、軽快な展開が際立っていて、沢山笑いながら、少し感傷的な気持ちになる映画でした。
人物を掘り下げていく中でも行天の存在感と人生観みたいなものへの理解の方が強かったように思います。

ただ40代になって改めて観ると、自分の人生で積み上げたものと失った物が増えたせいか、多田の人生の挫折に強く共感してみていました。
特に岸部一徳扮する刑事 早坂の登場からラストまでは、多田の独白を通して彼の自分自身を許せない鬱屈した思いに飲まれ、だからこそラストの行天との再会に胸をなでおろして幸せな気持ちでラストのエンドロールを見送ることが出来ました。

挫折と言うか、過去への後悔と言うか、そういった重く纏わりついたものはテーマとしてある作品だと思います。
娘を亡くし、妻と別れ、物語のスタート時、多田の気持ちは失意のどん底だったと思います。
挫折して心が折れ気持ちが小さくなっている。
心が折れている時、人との関わりは断ちたいですし、ひっそりと誰とも関わらずに生きていきたい気持ちになります。
目立たずに誰とも関わらずに生きるから放っておいて欲しい。
それでも過去はいつまでも自分を苦しめてくる。
一人でいられる孤独の中に安心感があって、とは言え、いつまでも一人でい続ける事で前に進めないもどかしさもあって、そんな時に現れたのが行天でした。

「いい学校を出て、いい奥さんを作って、お金持ちになって・・・。」という人生を歩んでいるはずだった多田と、またそれとは全く違う人生を歩んでいるはずだった行天の再会。
どちらも世間から見れば日の当たる場所には居ない二人ですが、二人にとって大きく違うのは、過去を受け入れている行天と、過去を拒んでいる多田。
とは言え、行天も親を殺す為にあの場にいたのでしょうし、過去を受け入れているといっても受け入れ方が突き抜けているのかもしれませんが。

序盤の多田はカリカリと苛立っている雰囲気があり、鑑賞している受け手側としても、それが彼の本来の姿なのか?、何か気持ちを揺るがす大本があるのか?が判らないまま話は進みます。
それでも、由良公の為に星と対峙する姿や、由良公に対しての「自分に与えられなかった物(愛情)を誰かに与えることは出来るんだ」という言葉。
それから山下に追われる行天を探して街を走り回る姿。(星の「走れ。便利屋。」と言うシーンも最高にいい。)
そういった所に多田のまっすぐさを感じて、今現在の彼の鬱屈した雰囲気とのギャップに違和感を感じます。

そして、早坂刑事の登場から明かされていく多田の過去。
荒れる多田に対して、行天は全ての言葉を受け入れていきます。
多田にとって挫折の根本は失った物で、行天に対しての「何もないようなふりをして全てを持っている。」という言葉は完全な当てつけでしかなかったのだと思います。
けれど、その後、全てを打ち明ける多田を見て、多田は自分の汚さも含めてぶつけることが出来る誰かが必要だったんだと感じました。
自分の中で消化できない苛立たしさを、言葉の暴力や涙の打ち明けで誰かにぶつけて、自分の醜さも本心も知ることが出来たのではないかと。
親や恋人に当たり罵り、自分の未熟さを知る若者と同じで。

全てをぶつけた後に、行天との別れを告げた多田は、この先の自分の挫折を癒す人生に行天を巻き込むべきではないと判断したように感じました。
醜い自分を見せたからこそ、一人で自分の業を背負うべきと判断したのかな?と。
そして、一人を選んだ多田の意思を、否定せずに受け入れている行天。

静かで落ち着いているようで、何も変化のない年末を迎えた多田の元に行天は帰ってきます。
1年前には静かな不快感を持って再会した二人が、バス停で言葉を探して黙り込んでいる姿は印象的でした。
行天は多田に受け入れてもらえるまで静かに待ち、多田は自ら行天を受け入れる歩み寄りを見せる。

このラストは本当に良いラストでした。
ずっと多田視点で話を進めてきましたが、行天がどこかで話した「でもね、俺も知りたいんだ。人はどこまでやり直せるのか。」という言葉。
ちゃんと届いて多田はこの先やり直していくんだろうな。と、希望が感じられるラスト。
そして、一年前に両親を殺す為に刃物を持って訪れた場所に、多田を待つ為に訪れた行天。
行天にとっても多田との出会いは、彼の過去の傷を癒してくれる出来事だったんだな。と、そのことも嬉しかったです。

この後の岸田繁の歌う穏やかなエンドロールに乗せて流れる映像も素晴らしかったです。
母親と笑顔で歩く由良公や母親の荷物を持ち買い物に出掛ける山下親子の映像など。
映画っていいな!と、終始、笑いはありつつも鬱々とした雰囲気が纏っていたこの映画を全て晴れやかに終わらせてくれた大好きなエンディングです。

そんな感じで心情的な感想が多くなってしまいましたが、この映画の軽快さやユーモアは本当に素晴らしかったと思います。
備忘録代わりにこの映画の好きなシーンを上げると、
軽トラのフロントガラスをカチ割られ「なんじゃこりゃー」と叫ぶ多田に「誰? 全然似てない。」とつぶやく行天。
退院した行天を事務所に連れ帰る多田に対して、「あなたの噛んだ 小指が痛い♪」と歌う行天。
でも一番ほっこりしたのは、監督の大森立嗣の名前を見ながら、そう言えばお父さんの麿赤児と弟の大森南朋も出てたんだだな。と気付いたこと。
考えてみればこの監督さんの映画はこれしか見ていない。
少し追いかけてみようと思いました。

最後にもう一個だけ、役者の演技も素晴らしい映画でしたが、セリフとしては2回しかしゃべっていない刑事役の岸部一徳の存在感は凄まじかったです。
行天が去った多田に対して、山下が戻ってきたことを伝える早坂刑事の台詞。
「人を助けても自分を救うことにはならない。」という多田の心理を読み通しの言葉や、
「あんなクズでも誰かに必要とされてるんですわ。」と、多田への激励なのか皮肉なのか判らない言葉。
トータルで1分程しかない中でのこの人の存在感。ほんと凄かったです。
ユーモアが多く軽妙なテンポで進むこの映画の中で、人間的な恐怖がピリピリと差し込まれてきて、この映画に生々しいドラマ性を与えていたように感じました。

3.評価

個人的な好き度合い:★★
この先も何度も見たいくらいに面白かった映画でした。

世間の評価は以下のような感じです。

映画.com3.5(2628人) 
Filmarks3.6 

面白いという方の意見:
・ゆるい雰囲気が好き。
・主人公2人の掛け合いが面白い。
・原作通りの面白さ。
・まほろ(町田市)の世界観と今の時代がよく反映されている。
・観る回数を重ねる毎に強いメッセージを受け取れるようになる。

面白くないという方の意見:
・便利屋の仕事の描き方が雑。これではやっていけない。

世間の評価を見ての印象:
30代の泣きの映画かと思ったんですが、あまりそっちに行く人は多くなかったみたいで。。。
僕は泣いたんですけどね。
でも、確かにこの映画の二人の主役は豪華だし、はまり役だし。
その掛け合いも面白いし、脇を固める人達も松尾スズキなど、本当にうまく嵌っていました。

amazon prime videoで観る。

4.お勧めしたい人

こんな方にはお勧めの映画かも知れません。

・とにかく笑いたい人。
・がつがつしていない男の人が好きな人。
・人生に挫折してやり直したい人。
・裏社会物が好きな人。
・ラストシーンが最高にいい映画。

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