『巨匠を観る』企画、4作目(全27作)の映画です。
1.映画情報
作品名:アニー・ホール(Annie Hall)
ジャンル:恋愛 コメディ
鑑賞履歴:2021/8/3(U-Next)
公式サイト:
wikipedia:wiki
監督:ウディ・アレン
制作年:1977年
制作国:アメリカ
上映時間:93分
配給:ユナイテッド・アーティスツ
メインキャスト:ウディ・アレン ダイアン・キートン キャロル・ケイン ポール・サイモン
スタッフ:脚本(ウディ・アレン マーシャル・ブリックマン)
原作:
受賞歴:第50回アカデミー賞 作品賞 脚本賞 監督賞 主演女優賞
予告動画:
2.あらすじ
ニューヨークを舞台に、コメディアンのアルビーが別れた恋人、アニー・ホールとの生活を振り返る恋物語。
世の中を斜に構えて生きるような皮肉好きのアルビーと明るく天真爛漫なアニー。
二人の出会いから別れまで、ユーモアの中に切なさを感じるストーリーです。
3.感想
※※※ 以下、ネタバレありです! ※※※
男って、プライドと見栄の生き物なんだよな。と、観ていて情けなさが愛おしくなってくるような映画でした。
男の序列争いって本当に残酷だと思います。
金か、喧嘩か、名誉か、女か、仕事の成功か、、、果てのない”自分が上”争い。
全てを手に入れたいし、ただ、当然の事ながら全てを手に入れるのは難しい。と言うよりも生まれ持った物の違いで叶わなかったりもする。
けれど序列として下を認める事の屈辱が死ぬほど嫌なので、絶対に人を自分よりも上だとは認めない、何かで負けても別の所で勝っていれば負けを認めない、だから果てがない。そしてこういうかっこ悪い男らしさ。
どうなんだろう?世の男のどのくらいがこういった気持ちを持っているのか?は知りませんが、こんな気持ちって男にはありますよね??
知ったかぶりで声の大きい男、ポエムみたいな言葉でかっこつける男、笑えないジョークを自信たっぷりに見せつける男。
そして見た目は悪いのに余裕たっぷりで接してくるトニー。(ごめんなさい。この人、ポール・サイモン(サイモン・アンド・ガーファンクル)でした。。。)
アルビーは心の声で彼らを貶め、なんでこんな奴に。自分を追い込んですらいない奴に負けなければいけないんだ!
と、自虐と嫉妬を愚痴り続けているような、アルビーの心の声がモノローグで描かれるこの映画では、そんなかっこ悪い男心がいっぱいの映画でした。
ストーリーは、引っ付いて別れて、また引っ付いて別れてしまう男女の話。
そんな話なので、なかなか全編を通して心地よいだけの話にはならないのですが、二人の関係がよい時は何をやっても心地よく、悪くなり始めると切なさと共感と。
主人公はコメディアンのアルビー、世の中を斜に構えて生きるような少し皮肉好きの男。
ユダヤ人の家系であり、生まれも育ちも恵まれているとは言えなかった彼は、見た目もいまいちで、男から見てもあまり魅力を感じるタイプの男ではないです。
おまけに少し束縛体質で、性欲も強め。
テニスコートで友達を介して出会った二人は、アビーからの好意もあって付き合い始めます。
アビーはアルビーのどこに惹かれたんだろう?
アビーにはアルビーが大人に見えたのかな?
テレビにも出ていたので、元々ファンだったのかな?
根っから明るいアビーにとって、笑わせることが得意なアルビーは魅力たっぷりに見えて、死について語ったりする意外性や、その生い立ちの自分との違いが魅力的に感じたんだろうか?
お互いの事を過去の恋人との関係まで話せるほどに仲が良かった二人でしたが、別れて、よりを戻しての後、アビーがハリウッドのプロデューサーのトニーと知り合い、新たな道に進むためにアルビーから離れていきます。
なんとなく可哀そうで別れられない。と、アルビーを語っていたアビーにとって、二人の関係は、彼女自体が進みたい方向性を持ってはいなかった中での、現状維持みたいな関係だったんだと思います。
けれど、アビーが新しい世界に羽ばたいていく時、アルビーは重荷でしかなかったんでしょう。
アルビーは追いすがり飛行機で追いかけて会いに行くが、追い返されてしまう。
切ない。
ストーリーはここで終わらず、1年後?の後日譚まで含まれています。
アルビーは舞台の世界で脚本家として、彼女との別れをハッピーエンドに変更して成功し、アビーは結局、夢を果たせずニューヨークに戻って、そして二人は偶然再会する。
お互いに新しい恋人も出来ていて、友人としての再会にしかならなかったものの、アルビーはアビーの観た映画がかつてつまらないといった映画だったことに対し、少しだけ優越感を語る。
(アルビーのこんな所で自虐たっぷりに優越感を口にする姿が、男らしい惨めったらしさで逆に愛おしくなってしまう。)
二人のかつての親密なキスシーンをいくつも流し、最後に今の二人がキスをして別れる姿。
これがまた、ひたすらおしゃれ。
改めてこの映画、アルビーのモノローグと共に、時に時間を止めて、時間を遡り、またアルビーがカメラに向かって受け手に話しかけたりと、映画という表現を使って豊かにストーリーを進めていくのを新鮮に感じながら観ていました。
分割画面や台詞とは違う心の声なんかもそうですね。
自由な映像表現と、アルビーの詩的と言うよりは皮肉の効いた比喩表現たっぷりのせりふ回しが、シンプルなストーリーを魅力的な作品に仕上げていたように感じました。
ダイアン・キートンの70年代らしいヒッピーファッションも取り入れたスタイルも可愛い物ばかり。
アルビーはいつもチェックシャツにツイードジャケットという変わり映えのないスタイルですが、登場する癖のある人々にはそれぞれが”らしい”ファッションが施されており、アルビーの皮肉に合わせて見る彼らの個性を良く際立たせていたように思います。
あとは、この映画の最大の魅力はアルビーを通して語られるウディ・アレンのセリフ回しですね。
自虐的で暗喩的、そして圧倒的な量とスピード。
一つ一つを咀嚼するのは追い付かない物が多かったものの、ストーリーの時々で語られる言葉には悲哀が満ちていて、アルビーの気持ちを添えるには良い効果だったと思います。
改めて何度も繰り返して観ながら、言葉の意味に浸っていくのも楽しめる映画かと思います。
4.評価
個人的な好き度合い:★☆☆ (1/3)
※ ★☆☆~★★★が凄く面白いで、普通に面白い以下は全て☆☆☆です。
映像的な仕掛けや時間軸の操り方、心情が矢継ぎ早に吐き出されるセリフ回しが独特で、テンポよく笑いながら二人の恋を見守り、寂しさも感じる映画でした。
男の見苦しさが身につまされるような、情けないのに愛おしさも感じる気持ちになります。
恋愛物ですが、男性の方にもお勧めです。
世間の評価は以下のような感じです。
Filmarks:3.7
映画.com:3.5
amazon :4.3
面白いという方の意見:
・ユーモアがあって、ロマンチックで、切ない、なのに現実的な映画。
・男のナルシズムを曝け出した作品で、情けないのに共感してしまう。
・「男女の関係性とはサメと似ている。常に変化をしてないと死んでしまう。」名言。
・当時の時代背景が今観ても面白く何故か切なく感じる。
・洗練された台詞とマシンガンのような応酬が心地よい。
・映像的な仕掛けが楽しく、テンポよく観れる。
・コメディばかりを撮ってきたアレンが、コメディのテイストは残しつつドラマを取り始める転機となる名作。
・ダイアンキートンが可愛くておしゃれ。
面白くないという方の意見:
・アビーがアルビーを好きになる理由が判らない。
・主人公の性格が人間的に好きになれない。
・アニーは金や地位で男を変えていく女にしか見れない。
・ストーリーとしては何の変哲もない話。
・時間軸が判り辛い。
世間の評価を見ての印象:
アニー(ダイアン・キートン)の可愛らしさが、ファッションも含めて多くの方が絶賛する一方で、アルビー(ウディ・アレン)に関しては人としての不愉快さの意見も目立ち、この作品の評価の分かれる所でした。
僕も、アルビーの人としての魅力はあまり感じない中で、とは言え、男ってこんな情けない物だよね。という、ちょっと無理に紐付けた所はありますが。。。
映像的な仕掛けは特に際立つ映画なので多くの方も触れられ高評価が多いですが、もう一つの特徴であるセリフ回しはアルビーへの反感の一因にもなっているようで評価の分かれる所でした。
個人的にも一度聞いただけで内容が上手くはまらない。
というよりも、次の話題や会話に移っているので、なかなか理解が追い付かない所もあり、この辺りはこの映画が大好きな方は何度も観て、理解を深めていくのも良いかもしれません。
あとは、恋愛映画にも拘らず、泣いたり共感したり、という意見はあまりないんですよね。
アルビーを主にした男映画だからですかね。
言われてみれば自分もそんな感じかな。と思いつつ、ラストのキスシーンはかなり泣ける展開ではあるんですけどね。
amazon prime videoで観る。
※視聴不可です。
U-Nextであれば観れます。
5.お勧めしたい人
こんな方にはお勧めの映画かも知れません。
・卑屈な自分が嫌いな人。
・映像がスタイリッシュな映画。
・芸術寄りの映画。
・ファッションを楽しめる映画。
・ブラックな笑いが好きな人。
・ダメ男に惹かれる女性の人。
・男女の別れ話の切なさが好きな人。
・ユダヤ人の人種問題を扱った映画。
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