『巨匠を観る』企画、3作目(全27作)の映画です。
1.映画情報
作品名:仮面/ペルソナ(Persona)
ジャンル:サスペンス
鑑賞履歴:2021/8/2(U-Next)
公式サイト:
wikipedia:wiki
監督:イングマール・ベルイマン
制作年:1966年
制作国:スウェーデン
上映時間:84分
配給:ザジフィルムズ
メインキャスト:ビビ・アンデショーン リヴ・ウルマン
スタッフ:制作・脚本(イングマール・ベルイマン)
原作:
受賞歴:
予告動画:
2.あらすじ
失語症になった女優と共に、海辺の別荘で共同生活を送る看護師の女性の二人劇。
徐々に打ち解け自身の秘密を打ち明ける看護師だったが、女優の裏切りに気付き恨み始める。
やがて、二人の精神は混濁していき、現実と妄想が入り乱れる展開になり。。。
3.感想
※※※ 以下、ネタバレありです! ※※※
冒頭からグロテスクでショッキングな映像の連続に目を覆いつつ、これが50年以上前の映画である事に改めて驚きながら観ていました。
映像が受け手に恐怖と不安感、そして狂気を一気に植え付ける暴力性に圧倒されて映画の世界に引き込まれたオープニングです。
ストーリーの展開も自分語りや手紙等を介したものが多く、恐怖感を煽る短いカットもバンバン投入されてくるので、サイレント映画を観ているような感覚にも陥る感じでした。
ワンカットにとんでもない威力があったムルナウの映画やカリガリ博士を観て、なんだこれ!と衝撃を受けたのと同じような既視感を感じました。
ベルイマンが初めてなので、この映画の技法的な部分、画力の強さや破天荒さがこの人の特徴なのか、この映画だけの実験的な要素なのか?は判りませんが、かなり釘付けにされたのは確かです。
全体を通してもモノクロームですが白が強く美しいと感じるのはなんでだろう?と思いながら、病室も舞台となるだけに白を基調にした清潔感、というか簡素な雰囲気のせいかもしれません。
逆に別荘に行ってからは北欧らしい香具や食器に魅力を感じつつ、建物や調度品も大好きな建築家アルヴァ・アアルトのようなシンプルで落ち着きのある僕好みのものが多く楽しめました。
ストーリーは人によってはドッペルゲンガーと受け止めますし、人によっては多重人格、そして最初から一人の妄想、一つの人格が二人の間を行き交う。等と、要はグチャグチャした感じです。
とは言え、構成が崩れているのではなく、本筋のストーリーで追いかけていた話が途中で意図的に様相を変えていき、結局、何が正しいのか?を判らなく作っている話。
そして、何が正しかったのか?は最後まで受け手に委ねられ、映画は答えは与えてはくれないです。
こう言うと難解そうですが、あまり答えは追わずにシーン毎に醸し出される恐怖感を楽しむサイコホラーとして観てもいいのかもしれません。
また、判らないからと言って難しいという訳ではなく、むしろ映画の間、ずっと想像力を働かせ続ける事が心地よいとさえ感じる映画です。
デヴィッド・リンチが好きな方であれば、『マルホランド・ドライブ』と同じような感覚で、不可思議さの中の恐怖に引き込まれ、なんだろう?と想像力を働かせて観るけれど、結果、何のことか判らん!と思っても、映画の面白さが薄れることはない。というような類の作品です。
ただ、こういう意味不明系の映画ですと、作り手のしてやった感が鼻につくことが多いのですが、嫌味なく理解や想像を求めるのはこの映画の魅力なんだと思います。
一応、というか書く意味もなく、おそらく正解ではないのでしょうが、自分なりに思う所を纏めてみると、
アルマは本当はエリザベートで、エリザベートはアルマの中に巣くう架空の人間。と、そんな感じで観ていました。
アルマ目線でエリザベートを辿ると、警戒して、打ち解けて、憧れて、裏切られて、恨んで、詫びても許されず、復讐して、過去を暴き、無に帰して、一人で旅立つ。
と、復讐辺りで、エリザベートの旦那がアルマをエリザベートと呼び始めたり、過去も何故知っているの?と言う感じだったり、無に帰すのも自分の中から存在を消す事なのか?と思ったり、最後はアルマ一人になるし。
でも、そもそも”詫びても許されず”から”一人で旅立つ”の間は夢落ちっぽい描かれ方もしているし。
ただ、ペルソナと題売っている以上は、内面、外面を保つ人間性が描かれてはいるんでしょうね。
役者として演じる理想の自分、欲望と嫉妬と復讐に満ちた醜い自分。
内面の自分であろうとするほど、周りと馴染めずに苦しみ、外面の自分を出せば余りにも弱い。
結果、エリザベートは内面のアルマとして生きていく事を選んだんでしょうが、果たしてそれが幸せなのか?
なんでしょうね?やっぱり正解を追うよりも、80分の間、この映画の世界でグルグルと頭を巡らせておくのが楽しい映画なのかもしれないですね。
4.評価
個人的な好き度合い:★☆☆ (1/3)
※ ★☆☆~★★★が凄く面白いで、普通に面白い以下は全て☆☆☆です。
グロさのある映像で構成されたオープニングから一気に映画の世界に引き込まれました。
物語は筋書きも難解で、答えも明かされないですが、この世界の謎解きをしながら観るのが心地よいです。
『ファイトクラブ』や『マルホランドドライブ』が好きな方にお勧めです。
世間の評価は以下のような感じです。
Filmarks:4.0
映画.com:3.4
amazon :4.1
面白いという方の意見:
・ほぼ二人芝居の展開でストーリーを見せ切る力量が素晴らしい。
・ユングの外的側面(ペルソナ)をベースに、自身の内的側面(アニムス)が崩れていく姿がしっかりと描けている。
・カメラワーク、構図、ライティングが素晴らしい。
・タルコフスキーを始め、デヴィッド・リンチ、デヴィッド・フィンチャー、ラース・フォン・トリアー等、多くの監督に影響を与えた作品。
・難解ではあるが、テーマとしては普遍的な心理が扱われており、現代でも通ずる物。
面白くないという方の意見:
・何が事実で、何が妄想か判らないストーリーにモヤモヤする。話として面白い物ではない。
・よく判らない。
・当時は前衛的であった映像も、現代で観ると古臭く感じる。
・グロい映像は止めて欲しい。
世間の評価を見ての印象:
ベルイマンの中でもオープニングの様な前衛的な映像は特殊みたいですね。
他の作品に関して、牧歌的な魅力、等とも書かれていて、なおさら代表作を観たいのですが、VODにない。
BS辺りでやってくれるまではお預けになりそうですね。
色々な方がストーリーの解釈をされていますが、ユングのペルソナ、アニムスをなぞらえて、二人は同一人物という物が多数なのできっとそうなんでしょう。
なるほど。と思う物ばかりでした。
しかし、ここ最近、ヨーロッパの名作と言われるものを観ると、ユングを代表とする心理学的な教養って、最低限は持っていないと厳しいのかな?と思いながら。
全く無知なだけに、ちょっと限界を感じるんですよね。
映像は本当にグロい物もバンバン出てくるので、ダメな方は厳しいでしょうね。
オープニングを乗り切っても、作品内でも結構出ます。
amazon prime videoで観る。
5.お勧めしたい人
こんな方にはお勧めの映画かも知れません。
・観た後に嫌な気持ちになる映画を観たい人。
・精神的な病を扱った映画を観たい人。
・映像美を感じられる映画。
・映像がスタイリッシュな映画。
・芸術寄りの映画。
・難解で理解するのに体力がいる映画。
・美術面の素晴らしさを感じられる映画。
amazonでBlu-ray・DVD・原作を購入する。
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