映画感想『T2 トレインスポッティング』

1.映画情報

作品名:T2 トレインスポッティング(T2 TRAINSPOTTING)
ジャンル:ドラマ 犯罪
鑑賞履歴:2021/7/9(U-Next)
公式サイト:ソニーピクチャーズ公式
wikipedia:wiki
監督:ダニー・ボイル
制作年:2017年
制作国:イギリス
上映時間:117分
配給:ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント
メインキャスト:ユアン・マクレガー ユエン・ブレムナー ロバート・カーライル ケリー・マクドナルド ジョニー・リー・ミラー アンジェラ・ネディヤルコーヴァ
スタッフ:脚本(ジョン・ホッジ)
原作:
受賞歴:
予告動画:

映画『T2 トレインスポッティング』 予告編

2.あらすじ

公式サイトをご覧ください。

3.感想

※※※ 以下、ネタバレありです! ※※※

ネタバレありで書きますが、ラストがとんでもなくいいです。
じんわり幸せと言うよりも、完全に脱力して、この世界にひたすら浸っていたいと思うラスト。
レントンと一緒に大音量で「Lust For Life」を流して踊りたいくらい。

アムステルダムに逃げて、それでも生活が上手く行かず行き詰ったレントンが願っていたのは、、
イギーポップを聴きながら仲間と酒を飲んで踊り、たまにドラッグをするような懐かしい日々。
だったんでしょうね。
それをやっと叶えて、心から落ち着き払った笑顔で踊るレントンに癒されました。
本当に良いラスト!
故郷ってやっぱり恋しいんですよね。
小さな頃から一緒に育った仲間も恋しいです。
過去を振り返れば必ずその風景や仲間も一緒に浮かび上がってくるわけですから。

改めてストーリーに関してですが、前作のトレインスポッティングを2日前に観直した状態で、出来るだけ予備知識を入れないように、期待しすぎないように。と注意して観ました。

結果、面白かったです。
予想はしていましたが、前作の若者らしい鬱屈したぶつけ場所のないモヤモヤから、40代の肉体の衰えや人生への悲哀も感じさせながら、こまめに笑いを取りつつ進める話。
メインはレントンとサイモン(旧シックボーイ)の掛け合いになりますが、二人の間に若いベロニカを挟むことで、適当過ぎるおっさん達のノリと勢いにいい突っ込みを入れていたように思います。
二人のポンコツぶりが無性にさまぁ~ずの三村に見えてしょうがなく、若い女子アナが突っ込みを入れて場を保つバラエティ番組のような雰囲気で観ていました。

大体の所、プロテスタントの集団に対して歌うシーンでの危機を適当な思い付きだけで切り抜けていく感じ。
おっさん達は動きは愚鈍だし、頭も回んないけれど、悪いことの場数は踏んでいるので逞しさだけは超一流。
レントンの適当に出まかせでつく嘘が堪らないです。

多分、プロテスタントからお金を奪う辺りまで、ベロニカから見た二人の印象って結構最悪だったと思います。
40代って、すぐ病気自慢するし、自分達しか知らない世代の話を大喜びでするし、若い世代の流行に痛々しさも自覚せずに乗っかろうとするし。
しかもあれだけ仲違いして裏で裏切ろうとしていたのに、ゲイかと思う程に仲良くなるし。
今まで一緒に居ながらも魅力を感じなかったサイモンに対しては、生き生きとした変貌ぶりに今までの自分への態度はなんだったんだ?という、ちょっと腹立たしいくらい。
と、そんな感じではなかったかと。
それにしても、サイモンは昔から見た目の割に使い物にならない口だけキャラでしたが、今回も途中から全く使い物にならなくなりましたね。
すぐ過去を持ち出して裏切ろうとするし、プレゼンでもろくにしゃべれないし、その他諸々、髪を染めている時のヨボヨボ感は結構痛々しいです。

それに対して、そんなサイモンと組んで話を前に進めていくレントンも適当なおっさんとはいえ、明らかにうまく回り始める展開にベロニカもレントンの凄さがちょっとずつ判っていったかと思います。
そして、人生を選べから始まるレントンの絶え間なく続く適当な言い回し。
この言い回しから女性が惹かれていく理由はいまいち判らないのですが、やっぱりレントンはサイモンと違ってバカじゃないんだ。と、同じように見えて明らかに能力の違うレントンの魅力が浮き立っていました。
こうなるとベロニカがレントンになびくのはしょうがないのかな?と思いながら、けれどここでまたサイモンから恋人を奪っちゃったらどうなるんだろう?と不安になりますが、初体験の相手からして同じ二人、この辺りの奪って隠しては宿命なんでしょうね。

スパッドも良い役回りでした。
口数の多すぎる二人と比べて、純粋で弱いくらいに心優しい昔の通りのキャラクター。
最終的にベロニカの持ち逃げを手伝うのはスパッドですが、スパッドがそれを容認したことが、ベロニカが持ち逃げしても二人は大丈夫と言う太鼓判みたいなものだったんでしょう。
彼の小説が奥さんだけではなく、いろんな同世代の人々の心を癒して欲しいと願います。
というか奥さんのラストの「タイトル考えたわ」って台詞はお洒落過ぎです。
二人の様子を一所懸命に気にしてないふりしてゲームしている息子の姿もいじらしくてたまらないです。
もし、10年か20年後に続編を撮ってくれるなら、スパッドには幸せになっていてもらいたいですね。

ベグビーは昔の通りのベグビーでしたね。
ちょろっと父親としての顔も見せますが、今回のラスボス的な扱いで、レントン達の仲間には加わらず。という事でしょう。

そんな感じで個人的には笑いながら楽しんで最後まで観切ってしまいましたが、でもやっぱり、この映画はラストシーンが本当に全てで、そして最高でした。
ベロニカに子供がいるのも驚きましたが、冒頭の通り、レントンの穏やかな顔。
本当にずっと浸りたいラストシーンでした。

映画作りに関してですが、前作と同様に、ファッション、音楽、映像と、どこを取っても素晴らしかったです。
レントンは前作の坊主から少しモヒカンっぽくなったものの、相変わらずのブリットポップスタイル。
40代になってちょっと小綺麗になっていましたが、きちんと洗ったM-65のフィールドジャケットで颯爽と登場するのはかっこいいです。
サイモンは前作と同じスーツスタイルですね。
スパッドも変わらず個性的。
ベグビーは刑務所で何食べてるんだ?というような太り方でしたが、相変わらずのトラッドスタイルで、アーガイル柄のニットをピチピチで着ていたのが印象的でした。

音楽も幅広い選択でしたが、前回ほどダークな選曲ではなかったです。
ポップな物やヒップホップ的なノリの良いものが多かったように思います。
この辺りはサイモンの趣味が変わったことも影響しているのかもしれないですが、余りヒップホップは詳しくないので良く判らなかったです。
因みに、ラストの「Lust For Life」はprodigyのリミックスらしいです。
少しアップテンポでパンチの効いたかっこいい仕上がりでした。
印象に残ったのはドラッグ後のQUEENの『RADIO GAGA』。
エンディングのひとつ前、ウルフ・アリスの『Silk』も良い展開です。
そう言えばエンドロールの最初にUnderworldの曲が流れて、バックで建物を破壊解体する映像が流れますが、あの意図はなんだったんでしょう?
建物は朽ちて破壊されても、人間の根っこは何十年経っても変わらない。とか?

映像も相変わらずかっこいいです。
おっさん二人が全裸で走る姿ですらかっこいい。
シーンやカット毎にかっこいいと思うのは、構図の選択が素晴らしくいいんでしょうね。
前作の映像や、子供時代の映像もストーリーと上手く絡ませて使いながら、テンポよく繋いだ映像が心地よい物ばかりでした。

最後に、3度目になりますが、ラストシーンが心地よ過ぎる映画!

4.評価

個人的な好き度合い:★★☆ (2/3)
※ ★☆☆~★★★が凄く面白いで、普通に面白い以下は全て☆☆☆です。

かなり面白かったです。20年ぶりに出会う彼らのラストはこうあってほしいと思える心地よいラストでした。

世間の評価は以下のような感じです。

Filmarks3.9
映画.com3.7

面白いという方の意見:

・20年経って見た目と共に心も若い頃程の勢いがないが、だからこそリアル。
・20年前の映像を懐かしくなるのと同時に、未だにらしい4人でいることが嬉しい。
・1作目より、ドラッグや汚いシーンが少なく観易かった。
・20年経ってもユアン・マクレガーはかっこいい。
・スパッドが味が出ていい感じ。サマータイムの話も笑える。
・映像、ファッション、音楽、今作も素晴らしい。

面白くないという方の意見:

・ドラッグも暴力も観たくない。
・1作目のように幻覚状態のような映像を期待していたのでがっかり。
・おじさん達のドタバタした話。若さがない。

世間の評価を見ての印象:

「昔取った杵柄」ではないですが、往年のベテラン芸人がお正月のバラエティに出てきて、適当芸で毒も勢いもなく、そこそこの笑いと拍手をもらって去っていく。
そんな映画になったらどうしよう?と言うのが観る前の僕の不安で、結構、前作が好きな人にはそう心配していた人が多かったように思います。
けれど、蓋を開けてみると、やっている事は適当芸ですが、しっかりと見せ場と傷跡を残して去っていったような。
そんな裏切られ方をした方が多かったように思います。
20年経って40代になっているんだから、この位、力を抜いても笑い取らないとね。という、余裕をかっこよく感じる。
それはこの映画の続編を作った意図として、大正解なんじゃないか?と思いました。

前作が好きで今作に失望という意見はあまり見なかったです。
そういう意味では前作のファンの気持ちはしっかりと掴んだ今作だったのかもしれません。
僕も同じクチですが、とは言え、これでも思い出補正はせずに、ダメな映画になっていたら「前作の良さにケチが付いた!」くらい言ってやろうと思っていたんですが、いやぁ、良かった!
本当、面白くて心から安心しました。
4度目になりますが、ラストシーンが最高過ぎです!

amazon prime videoで観る。

5.お勧めしたい人

こんな方にはお勧めの映画かも知れません。

・人生に挫折してやり直したい人。
・音楽が最高の映画。
・映像がスタイリッシュな映画。
・ファッションを楽しめる映画。
・ブラックな笑いが好きな人。
・ダメ男に惹かれる女性の人。
・ダメ人間が好きな人。
・ラストシーンが最高にいい映画。
・ドラッグを扱った映画が好きな人。
・犯罪を扱った映画が好きな人。
・仲違いした友人や家族と仲直りしたい人。
・中年の男の魅力に取りつかれた人。
・中年の老いていく悲哀に感じ入る人。

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