映画感想『万引き家族』

1.映画情報

ジャンル:ドラマ
鑑賞履歴:2021/6/11(U-NEXT)
公式サイト:GAGA公式サイト
wikipedia:wiki
監督:是枝裕和
制作年:2018年
制作国:日本
配給:GAGA
メインキャスト:リリー・フランキー 安藤サクラ 松岡茉優 樹木希林
スタッフ:脚本、原案、編集(是枝裕和) 音楽(細野晴臣)
原作:
受賞歴:カンヌ国際映画祭 パルム・ドール(最高賞)
    第42回日本アカデミー賞 最優秀作品賞 最優秀監督賞 他11部門
予告動画:

【公式】『万引き家族』大ヒット上映中!/本予告

2.あらすじ

公式サイトをご覧ください。

3.感想

※※※ 以下、ネタバレありです ※※※

見終えた後のモヤモヤとした気持ち。
やるせなさと不快感と少し怒りと。
是枝監督の映画を観た後は、この気持ちになることが多いです。
今回はダメな方の映画でした。
ワイドショーを観た時に感じる、歪んだ良心で誰かを抉るような気持ち悪さ。

初期の『幻の光』や『DISTANCE』を観て、この監督が苦手になり、
その後の『誰も知らない』、『花よりもなほ』は違和感なく観れたものの、
この映画は自分にはダメでした。

独特の視点を持った映画を作る監督だと思います。
登場人物の誰かに視点を置いた映画ではなく、はるか上空から淡々とストーリーを進めていく視点。
そういった意味では『シン・レッド・ライン』や『天国の日々』を作ったテレンス・マリックに近い部分はあると思います。
特に『天国の日々』は幼い少女が殺人を犯す男女と疑似家族を過ごすストーリーという意味では近いテーマを持った作品かと思います。
ただ、テレンス・マリックの視点があくまで無感情で平等であるのに対して、是枝監督の視点は皮肉な目線を感じます。
これを言葉で伝えるのは難しいのですが、ありていに言えば「ここまで残酷にする必要はあるか?」と、私自身の根っこの部分が拒否反応を起こしてしまいます。

例えば、DVがあり、育児放棄があり、貧困があり、教育の放棄があり、お金への執着があり、死体遺棄があり、上げればきりがない程、世の中の残酷さを挙げて、それらをありきで繋いでストーリーを組み立てたように感じてしまう。
その上で登場人物を絶対的な悪として描くのではなく、振れ幅のある人間性として善と悪や、優しさと冷たさや、逞しさと弱さや、そういった2面性を持たせて描く。
そういった描き方が、これもありていに言えば「人間をバカにしているように感じる。」というのが私がどうしても拒否感を感じる部分です。

映画なので、少なからず2時間という尺を持たせ、広げた話をきっちりと収束させる必要があります。
フィクションでもある以上、受け手を惹き付け、感情に訴える作りが必要なのは分かります。
ただ、私は作り手の意図を上のように感じてしまったし、それが事実であるとも思いませんが、居心地の悪さと不快感を持って観てしまいました。
多くの方が称賛されている映画なので、決して悪い映画ではないと思いますが、人によっては別な受け止め方をするという意見の1つだと思って頂ければと思います。

もう少し、映画の内容に関して、拒否感ではなくストーリーに関してです。
家族という物がテーマではありますが、血の繋がりはなくいびつな共同生活というのが正しい関係かと思います。
父親的な立場である治の立場として考えた時に、治が父親として相応しいのか?というのは少し考えていました。
息子的な立場の祥太のことを可愛がり、楽しく明るく接する父親、世間で煙たがられる厳格で高圧的な父親という姿とは正反対です。
ただ、同じく子を持つ父親として感じるのは、父親という存在は「子供を真っ当に育てる」という責任を強いられるという事。
場当たり的な優しさや楽しさではなく、子の将来にとって正しいか?という考えで、嫌われても疎まれても子が正しい方向に向いてくれるように見守る必要があります。

治は祥太にとって望まれる父親でありたいのだろうな。と思って観ていました。
優しく、楽しく、面白く、そうすれば祥太は自分を求め、自分は父親になれるのだろうと考えていたのでは?と思います。
けれど、祥太はいつまでも自分をお父さんとは呼んでくれなかった。
そして祥太が警察に保護されたことで自分に追求が来ることを恐れ、逃げ出してしまう。
表面的な優しさはやはり脆い。という事を突きつけられたシーンだったように思います。
「おとうさんはおじさんに戻るよ。」という言葉は、この映画に批判的だった自分にも心に刺さる言葉でした。
父親になりたかった自分の弱さと限界を認めた一言だったと思います。
と同時に、治にとっての家族という理想が、精神的に破壊された出来事だったように思います。

ラストでバスを追いすがる治を無視し、遠く離れてからその姿を探す祥太。
力強い眼差しに、いびつな共同生活を自ら離れ、自分の意志で未来へ進む姿が想起され、この子はちゃんと生きていけるという強さを感じるシーンでした。

先に、この映画の視点を淡々とストーリーを進める視点という話をしましたが、結論を多く語るのではなく、未来を受け手に委ねる映画ではあると思います。
祥太に関しては希望を感じましたが、家族として共同生活を送っていたそれぞれがこの後、どう進むのか?
特に妹的な立場のりんに関しては絶望しか感じないです。
本当に、なんて胸糞悪い映画を見せるんだろう?と、こういう所がこの監督が合わないと感じるところです。
世の中は残酷な物。という思想をぶつけられた気がして、それは事実であれ、それを堂々と口にしていいのは経験した人間だけでは?と、言いたくなります。

最後になりますが、役者の存在感は際立つ映画でした。
樹木希林の情の深さとあざとさを併せ持つ存在感は素晴らしいです。
松岡茉優の儚さのある諦観もかなり引き込まれました。いつ崩壊するんだろう?というギリギリ感が怖さも感じる演技でした。
リリーフランキーの情けなさ、脆さ、軽さ、その一方で狂気を感じさせる死体遺棄のシーンも堂々としたものでした。
子供たち二人も良かった。
祥太のキラキラした目とりんのおどおどした目。
チョイ役のはずの柄本明の存在感も凄い。
安藤サクラも、役者としては初めて観たのですが、明るさと情愛の深さ、そして筋の通った芯の強さも素晴らしい。
母親の意味を問われ、涙を浮かべて思いを語るシーンは、画面と向き合って見入ってしまいました。

4.評価

個人的な好き度合い:☆☆☆ (0/3)
好みの映画ではなかったです。

世間の評価は以下のような感じです。

映画.com3.8 
Filmarks3.9 

面白いという方の意見:

・是枝監督が初期の頃から扱ってきた貧困というテーマを今回も強く感じる。
・血のつながりよりも心のつながりを感じる家族の方が本物だと思う。
・役者は素晴らしいし、子役の二人も素晴らしい。リンを救ってあげて欲しい。
・家族6人で海に行くシーンの幸福感が素晴らしい。
・りんを信代が抱きしめるシーン、花火のシーン、信代の尋問のシーンが素晴らしい。

面白くないという方の意見:

・犯罪を助長する。道徳観がおかしくて不愉快。万引きを正当化するような映画を作ってはダメ。
・本当の貧しさを知っている人には共感できない。
・演出にあざとさを感じる部分が多い。

世間の評価を見ての印象:

普通に考えて絶賛されて当然の映画だと思います。
面白くないという方も道徳観への批判が多く、「そういう映画だから。」と突っ込みたくなりそうな。

子供達にとっては、本来の親と暮らすよりはこの家族といた方がいい。という意見は確かにそうだとは思います。
勿論、それが最良の選択肢だとは思いませんが。

amazon prime videoで観る。

5.お勧めしたい人

こんな方にはお勧めの映画かも知れません。

・社会問題に切り込んだ映画を観たい人。
・子供の純真さを感じたい人。
・家族のつながりを感じたい人。
・役者の演技力を感じたい人

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