映画感想『孤狼の血』

1.映画情報

作品名:孤狼の血
ジャンル:ヤクザ 犯罪 バイオレンス
鑑賞履歴:2021/9/8(U-Next)
公式サイト:公式
wikipedia:wiki
監督:白石和彌
制作年:2018年
制作国:日本
上映時間:125分
配給:東映
メインキャスト:役所広司 松坂桃李 真木よう子 滝藤賢一 石橋蓮司 嶋田久作 竹野内豊 ピエール瀧 伊吹吾郎 江口洋介 中村倫也 中村獅童
スタッフ:
原作:『孤狼の血』柚月裕子
受賞歴:第42回日本アカデミー賞 最優秀主演男優賞 最優秀助演男優賞 最優秀美術賞 最優秀録音賞
予告動画:

映画『孤狼の血』予告編

2.あらすじ

昭和63年、広島を舞台にしたヤクザの抗争と刑事二人の物語。

服役する尾谷組の組長の釈放前にそのシマを荒らす五十子会。
ベテラン刑事の大上は二つの組織に取り入りながら抗争を避けようとする。
その大上と組む新人刑事の日岡は、癒着や強請を厭わない大上のやり方に不信を感じるが。。。

3.評価(個人)

個人的な好き度合い★★☆ (2/3)
※ ★☆☆~★★★が凄く面白いで、普通に面白い以下は全て☆☆☆です。

とんでもなく面白かったです。

オープニングのグロい映像に最後まで観れるか不安でしたが、脳内麻痺してアドレナリン全開で最後まで観ました。
過激な暴力や欠落した正義感が目立つ一方で、しっかりと組み立てられたストーリーも面白いです。
狂気を感じる役所広司や、目覚めていく松坂桃李の存在感も抜群です。

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4.感想

※※※ 以下、ネタバレありです! ※※※

そりゃあ、男だし、こういう映画は好きですよ。
もう大好きですよ。
でもね、恐すぎるよ。。。

オープニングから豚の糞を食わされ、指を枝切りバサミで切り落とされ、このレベルの描写が来たら次は耐えられんぞ。と思いながら、プルプルしながら見続けて、幸いにもこれ以上はあったのか、なかったのか、多分、途中から麻痺して普通に観てましたけど、えらいどぎつい描写が多かったです。
それにしても、埋められた死体を掘り起こす映画はこれまでもあったような気はしますが、腐乱した状態の生首を曝すか?
やりすぎだって!
ちんこに入れた真珠をメスで取り出したりしたらダメだって!!
土左衛門になった大上(役所広司)の膨れ方もリアルすぎるって!!!

というか、この映画しつこいんだって殺し方が。
恨みも憎しみも全部なすりつけて、散々いたぶり尽くして、それでも許さずじりじり殺して。
こんな残忍さも喜んでこなすようなキレた人間じゃないとヤクザになれないんだぞ!っていう、ヤクザの適性検査を受けさせられているような、ひたすら観続けさせられる拷問。
本当にやりすぎだ。
ただ、こういうのはこの世界で生きる人間の異常性というか、良く言えば覚悟というか、そういう非現実的だけれど自分達の身近にこんな世界もあるっていうのを強烈に印象付けているようで、改めてヤクザには近付かないようにしようだとか、サラ金には手を出さないようにとか、ヤクザと揉めたら死ぬ気で逃げようだとか、心底思いました。

ただ、そんなとんでも映画なんですが、描写とリンクして描かれるストーリーはかなり面白いです。
この辺りは原作を含め、脚本もしっかりしているし、役者陣も突飛な世界とは言え地に足の着いた演技の中でやっぱり役所広司が上手く演技しているんでしょうね。
対立するヤクザの中で顔を効かせて、その突拍子のなさと狂気と狡さを見せる一方で、血を流させない事を愚直にやり続ける正義感?常識?人間味?
この辺りはストーリーが進む毎に大上の心理が見えてくるし、その根っこにある物が温かみだと感じた時の観ている側のちょっとした嬉しさ。
こういう難しいキャラを魅力たっぷりに演じてましたね。
ドスも効いて、ラブホテルで『警察じゃけぇ、何をしてもええんじゃ。』なんて凄みながら、ちんこの真珠をメスでほじくる男を見たことはないですが。
こんなシーンでリアルに引き付ける演技をされると、そら、面白いに決まってますよね。

でもこのヤクザ間の均衡を握る大上刑事が、脅しと執念でその暴発を防いで泥臭く立ち回るというのはある意味痛快で面白さもあるんですが、設定を変えればサラリーマンの内部根回しみたいな物語にも感じられる悲哀感に満ちているというか。
とにかく、あっちの機嫌を取り、こっちで恩の貸し借りをして、向こうは突っぱねて、まずくなったら上に擦り寄って。と、なんでしょうね?プロジェクトを進める時の調整と段取りの世界と、キーマンの取り込みをひたすら動物的な勘でやっているような。
相手がヤクザや警察組織なので、そこに命を懸けてやらざるを得ないし、それ故に「曲芸師」っていう言葉も出てくるんでしょうし。
ただ、この辺りのサラリーマンにも通じるストーリーの軸っていうのが、良く出来た脚本だよな。と思いながら。
そして、それだけの話に留まらず、警察内部の泥沼化や、刑事間の駆け引き、ヤクザの世代交代、堅気の人々の恨み回収まで描いて、そして結果として若い日岡の成長物語になるっていう、この辺りもほんと良く出来ていると思います。
松坂桃李もこの辺りの悶々としたふて腐れ感から、ぶち切れて腹が据わっていく所まで、良い演技でしたね。

一応、この作品を観たという事で、上映中の続編を映画館で観るか?という所なんですが、正直、この描写を映画館で耐え抜く自信がないんですよね。
予告動画を観ましたが、ふてぶてしくなっている松坂桃李とかかなり観たいですし。
五十子会に寺島進とかたせ梨乃と鈴木亮平って面白いに決まっているじゃないですか?
更に尾谷組に渋川清彦、斎藤工、早乙女太一って一体どれだけ力を入れてキャスティングしてるんだ?っていうくらい。
吉田鋼太郎の役どころも気になるし、中村獅童を始め癖のあるメンバーがどう絡むのか?
意を決してプルプルしながら映画館で観るか?
かなり迷い中です。

5.評価

世間の評価は以下のような感じです。

Filmarks3.9
映画.com3.8
amazon4.4

面白いという方の意見:

・東映の気合が凄い。「アウトレイジ」への挑戦状。任侠物で邦画に勢いを与えているのが嬉しい。
・オープニングで、このくらいの物を見せますよ!って挑戦的にグロい物を描いている心意気がかっこいい。
・これを機に昭和のやくざ映画を色々と観てみたい。
・役所広司の存在感が凄い。松坂桃李もこの作品で一気に魅力が増した。
・役所広司の演技に「シャブ極道」の頃の強さを感じた。
・広島弁でナレーションを上手く利用した作りに『仁義なき戦い』を思わせる。
・『仁義なき戦い』も感じるが、『県警対組織暴力』[’75]が近い。昭和の雰囲気を感じるやくざ映画。ただ、凄みとしては両作品には及ばない。

面白くないという方の意見:

・大上がいなくなった後に、彼の正義感や優しさが描かれる展開は少し興醒めする。
・顔で飯を食っているはずのヤクザ側のキャスティングが弱い。中村倫也は良いけど。
・組と名前と顔がこんがらがるので相関図が欲しい。
・原作の良さが全く生かされていない。
・BGMと声の音量のバランスが良くない。何を言っているか判らない。
・ストーリーが陳腐過ぎてつまらない。
・濡れ場の色気がいまいち。昭和の東映作品並みに、ここは描いて欲しい。

世間の評価を見ての印象:

評価の全てがこれという訳ではないですが、
一般的な映画ファンから大絶賛の反面、旧来の任侠ファンからは酷評という。
なんとなく、こういう相対関係もあるのかな?と思いながら。

一般的な映画ファンに属する自分からすると、ヤクザの怖さや暴力性も十分に伝わり、ストーリーも楽しめたんですが、このジャンルを見慣れている方からするとまだまだ甘いのかもしれないのかもしれないですね。
とは言え、一般ファンにはこのくらいの刺激でも許容オーバー気味なので、これ以上の世界にはちょっと近付けないかな。。。
とりあえず、『仁義なき戦い』『県警対組織暴力』『シャブ極道』の三本は観てみようと思いました。

好意的な方の中では、役所広司と松坂桃李が絶賛ですね。
自分も久しぶりに役者で映画を選ぼうかな?と思う程、良い演技でした。

あとは、これを機に邦画が盛り上がっていって欲しいな。と思いながら。
ヤクザ映画って世界的にも人気の出そうなジャンルだし、北野武とこの人と、他にもこのジャンルで世界に出て行ける人が出ると、邦画のアクションとしての評価も随分と上がりそうな気がしますね。

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5.お勧めしたい人

こんな方にはお勧めの映画かも知れません。

・殺したいほど憎らしい人がいる人。
・社会問題に切り込んだ映画を観たい人。
・人の狂気が感じられる映画を観たい人。
・緊迫感のある怖さを描いた映画が好きな人。
・常識や道徳観が崩れていく映画が好きな人。
・役者の演技力を感じたい人。
・脚本の素晴らしさを感じられる映画。
・美術面の素晴らしさを感じられる映画。
・胸糞キャラを観るのが好きな方。
・メンタルの強い男性が好きな人。
・男でもほれぼれするようなかっこいい男性が好きな人。
・裏社会物が好きな人。
・犯罪を扱った映画が好きな人。
・ヤクザを扱った映画。
・昭和の空気が感じられる映画。

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