映画感想『幸福の黄色いハンカチ』

1.映画情報

作品名:幸福の黄色いハンカチ
ジャンル:ドラマ ロードムービー 恋愛
鑑賞履歴:2021/10/13(U-Next)
公式サイト:
wikipedia:wiki
監督:山田洋次
制作年:1977年
制作国:日本
上映時間:108分
配給:松竹
メインキャスト:高倉健 武田鉄矢 桃井かおり 倍賞千恵子 渥美清
スタッフ:脚本(山田洋次、朝間義隆)
原作:『黄色いリボン』 ピート・ハミル
受賞歴:第1回日本アカデミー賞 最優秀作品賞 最優秀監督賞 最優秀脚本賞 最優秀主演男優賞 最優秀助演男優賞 最優秀助演女優賞
予告動画:

幸せの黄色いハンカチ予告編1

2.評価(個人)

個人的な好き度合い ★★★ (0/3)
※ ★☆☆~★★★が凄く面白いで、普通に面白い以下は全て☆☆☆です。

人生の大切な一本の一つ。

情けなかった男が成長し、強い男が秘密の過去から強さも弱さも丸裸にされ、若い二人の恋も描く。
4日間の旅を通して描かれる3人の変化が心地よい映画です。

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3.感想

※※※ 以下、ネタバレありです! ※※※

後半、目頭が異常を起こしてずっと頭が痛くなるくらい泣けてくる映画。

やっぱり何度観てもこの映画は好きです。
序盤から一本気の男くささの権化のような勇作(高倉健)と、情けない恥ずかしい、そしてみっともないの3拍子が揃った欽也(武田鉄矢)のはまり様。
もう欽也のダメ加減と言ったら見ているだけでこちらが居た堪れない気持ちになってくるくらい。
ミーハーで、かっこつけで、プライドが高くて、威勢は良いのに喧嘩が弱くて、思い込みが激しくて、女のケツばかり追いかけて、おまけに調子乗りでガサツな上に見た目も悪い。
いたよな、こんな奴。
でも、こんな距離を置きたい奴にも拘らず、実は純粋で涙もろく情に厚かったりする。
そして根っこは優しくて、誰かを助ける事にまっすぐに向き合えたりする。

そんな欽也の成長物語でありつつ、完璧としか思えない勇作の「実は。。。」という謎めいた過去が3つくらい出てくる一人の男の強さも弱さも丸裸にして行くような悲哀に満ちた話でもあり、もう一人、朱美(桃井かおり)に関しても色々とドラマはあるのだけれど、もうそこはすっ飛ばして欽也と朱美が純愛に落ちていくラブストーリーでもあり。
それを偶然北海道で出会った3人の4日間の旅で描いてしまうっていうのがまた、良く出来たシナリオだと思います。

序盤は本当に、キラキラした目で見てしまう勇作と、冷めた目で見てしまう欽也という解り易い二人の関係でしかないのですが、後半に入って勇作がひより始めてグズグズしてくるのにつれ、欽也の方は一直線に前だけを向き、調子に乗って勇作を叱ったりする。
思わず欽也に「おい!」と言いたくなるが、どう考えても欽也が正しくて勇作が悪いのだから仕方がない。
ただ、ここで朱美が正反対の二人を取り持つ役どころとして、本当にいい仲裁をしていく。
いや、ほんとこの辺りの3人のバランスがラストにかけて絶妙になっていく一体感も堪らない。
ロードムービーって、ほんとこれだよな。という醍醐味も最高に味わえます。

でも勇作も完璧だと思ったのに、過去を振り返ると酷すぎる。これが。
光枝(倍賞千恵子)じゃなくても「あんたって勝手な人だねぇ。」と泣きたくなるくらい。
「不器用だから。」で許されるのも夕張に向かい始めるまで、向かってからのグズグズ具合はウジウジに近い。
『草野球のキャッチャー』っていうのは本当にこういう人の事を言うんだと思うくらい。
けれど、そんな今にも身投げするんじゃないか?と心配になる様なボロボロの勇作だからこそ、ラストの破壊力がとんでもなく凄い。
何が凄いってハンカチの枚数が凄い!
過去のやり取りでハンカチ1枚を想像していたのに、一面にはためく黄色いハンカチ。
もう見た瞬間に涙、涙、涙。。。
そして、この後の展開も良すぎる。
道端に車を止めて、優しく抱き合いながらキスする欽也と朱美。
もう、欽ちゃん大好きって、あっさり言わせてしまうこのラストシーンがまた最高過ぎる。

そんな感じで、最高に泣けて幸せになれて、男としてのかっこよさも感じられるいい映画なんですが、このどれだけ時代が経っても色褪せない感っていうのは凄いですよね。
特に欽也なんて、僕が産まれた頃の若者、勇作の世代からは異星人と思われるような新人類。
けれど、その世代に育てられ、とうに40も超えた自分が見ても、いつの時代も若さ故の見苦しさ、みっともなさ、情けなさってこんな男だよな。と思いつつ、とは言え、自分の過去を振り返っても、身に覚えがないとも言えず、少し同情した気持ちも感じてしまう。
そんな男の気恥ずかしさを何十年経っても思い起こさせる武田鉄矢の熱演ぶりは、普遍的で時代を超越した存在感のように感じます。
多分、この辺りは女性が朱美を見て気恥ずかしく感じたりする部分もあるんじゃないか?と思いながら。
きっと男が勇作には憧れるけれど欽也には同情してしまうように、女性には光江には 憧れる けれど朱美には同情してしまうという気持ちがあるんじゃないだろうか?

それから、演出もひたすら感心するのが夕張に近付くにつれ道端にある黄色が目立つようになるところ。
標識やら、看板やら、歩く人々の洋服やら、ラストへの暗示の様に黄色を意識させていく展開が納得と言うか面白いと言うか。
こう、3人の感情が一体感を増して進んでいく様が黄色を求める目線に乗り移っていくかのような。
果たしてこれにそういった効果まであるのか?はともかく、今黄色を見付けないといけないという切迫した思いが受け手に乗り移って来そうな熱意は凄く伝わったような気がして、個人的にこの演出も絶妙だと感じました。

4.評価

世間の評価は以下のような感じです。

Filmarks:3.8
映画.com:3.8

amazon :4.3

面白いという方の意見:

・人間の弱さやカッコ悪さ、そして、優しさや美しさを描いた情に溢れる素晴らしい作品。
・国産ロードムービーの金字塔。
・ラストシーンは有名だし、まずジャケットからしてネタバレしてるけど、それでも涙腺が緩んでしまった。
・日本の戦後を生きた世代の高倉健と、戦後日本の「戦争を知らない子供達」の対比が面白い。
・高倉健の生き様に感動し、自分の生き方を見つめ直し成長していく若者の青春ドラマとしても素晴らしい。
・高倉健は当然だけど、桃井かおりと武田鉄矢の軽さも良かった。

面白くないという方の意見:

・勇作の感情的な暴力は救いようがなく、また、反省という態度からは程遠い。
・自己中心的な旦那と不憫すぎる妻。
・山田洋次監督の押しつけがましい道徳観が嫌い。

世間の評価を見ての印象:

日本の人情物映画を代表する監督と言えば山田洋次監督なので、良くも悪くもその名前だけで評価が分かれる所があるようで。
若い頃は、寅さんシリーズはともかく、『学校』等は出す度にアンチからのバッシングもあったような。
色々と政治的な思想への反発なりもあったりで、人情的な作品を作ると道徳教育のようだと言われたり。
作家性にそういった思想が反映されるのは当たり前の事ですし、それありきで作品も評価されるわけなので、監督さんとしても特に気にしてもいないとは思うのですが。

ただ、この映画に関してはそういった思想的な部分はあるような、ないような。
例えば、批判的な意見で多く出ている、罪を犯した勇作に対して美化しすぎ、反省しなすぎ。という意見は、共産党的にはどう判断されるんだろう?。
映画を観ている途中で気にはしていなかったものの、言われてみれば確かに更生はしているけれど悪乗りしているようにも思うし、独自の正義感からこの辺りは良しとされるんだろうか?
個人的にはスムーズに話は進んでいるようには感じているので、ほじくり返してどうこう言うつもりもありませんが。

面白い意見は、流石は名作と言われるだけの、多くの方が心を右から左に揺さぶられて、最後にストンと落ちて幸せになるという。納得の物ばかりでした。

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5.お勧めしたい人

こんな方にはお勧めの映画かも知れません。

・人生に挫折してやり直したい人。
・旅に出たい人。
・過去を悔やんでその思いから抜け出せない人。
・幸せな気持ちになれる映画を観たい人。
・困難な状況に仲間と立ち向かう一体感を感じるのが好きな人。
・人が後悔し生まれ変わっていく映画を観たい人。
・夫婦のつながりを感じたい人。
・役者の演技力を感じたい人。
・脚本の素晴らしさを感じられる映画。
・とにかく笑いたい人。
・ラストシーンが泣ける映画。
・もてたい男を微笑ましく見てしまう人。
・会いたくても会えない男女にふるえる人。
・中年の男の魅力に取りつかれた人。
・ダメ人間が好きな人。
・男でもほれぼれするようなかっこいい男性が好きな人。
・ロードムービーが好きな人。
・車好きな人。
・昭和の空気が感じられる映画。

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