映画感想『リリー・マルレーン』

1.映画情報

作品名:リリー・マルレーン(Lili Marleen)
ジャンル:戦争 恋愛
鑑賞履歴:2021/7/2(DVD)
公式サイト:
wikipedia:wiki
監督:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー
制作年:1981年
制作国:西ドイツ
上映時間:120分
配給:
メインキャスト:ハンナ・シグラ ジャンカルロ・ジャンニーニ
スタッフ:
原作:
受賞歴:
予告動画:

2.感想

※※※ 以下、ネタバレありです! ※※※

第2次世界大戦中、ナチスドイツの兵士たちに愛された歌「リリー・マルレーン」を歌ったビリーと、彼女が愛した反ナチス組織のユダヤ人ロベルトの話。
ナチスドイツが優秀な人種と認めるアーリア人のビリーと、迫害される側のユダヤ人のロバートの恋物語なので、その大戦中の恋は障害が多く、というよりもほとんど会うことも叶わないです。
その為、お互いに結構な無茶をして逢引きをしますが、その度にナチスに監視されて立場が危うくなります。

ナチスのしつこい追及、精神を攻撃する尋問、迫害人種への容赦ない差別と攻撃、命令を従わない物への死地への出征命令、そして「リリー・マルレーン」が流れる度に気持ちを奮い立たせて死地に飛び込む兵士等。
ドイツのこの時代を描く以上はナチスの凶暴性は避けて通れないのでしょうが、流石に毒々しいです。
そんなナチスの中に入って歌姫として祭り上げられていくビリーの危うさ。
ユダヤ人との繋がりを疑われてからの彼女の転落ぶりは、いつ殺されるのか判らない恐怖心を観る者に与えるサスペンスな展開でした。

ロベルトに至ってはもっと酷いですね。
ナチスに捕まった時点でビリーとの繋がりまでほぼばれており、ひたすらビリーがユダヤ人との繋がりを自供するように尋問される。
尋問というより狭い個室の中で一面のビリーのポスターと延々と流れる「リリー・マルレーン」の歪んだ一小節。
次第に精神に支障を来すロベルトの苦痛ぶりが結構なホラーでした。

そして、ナチスによる策略で意図せず同室で接見するビリーとロベルト。
お互いに夢にまで見た再開のはずなのに、というよりも失敗したらお互いが破滅することを理解した中での再開で、咄嗟に他人の振りをしてやり過ごそうとする二人の緊迫感。
なかなかこれは圧倒されるシーンでした。

それでも内通がばれ、凋落していくビリーと、逆に裏取引で解放されるロベルト。
ロベルトの策略によりビリーは殺害を免れるものの、戦争の終結後も二人が結婚することはないです。
ロベルトは解放後、ナチスも終焉を迎え、家族の繋がりから結婚し音楽家として大成しますが、自由になったビリーと再会を果たすも、その恋は実らず切ないラストを迎えます。
戦争を背景にすれ違っていく男女を描いた映画は多くありますが、この映画も多くの名作と同様にやるせなさを感じるラストでした。

監督はライナー・ヴェルナー・ファスビンダー、ニュー・ジャーマン・シネマの代表監督の一人で、残念ながら37歳の若さで亡くなってしまった方です。
僕はこの映画しか見ていませんが、べったりと絵の具を塗ったような個性的な映像、平面的に感じる固定された構図、調和の取れた舞台装置の美しさに加え、サディスティックな尋問やナチスらしい戦争鼓舞に感じられる狂気。
天才と言われる監督だけあって、ストーリー以外にも興味深さを感じる映画でした。
これで小難しいと今後は身構えるのですが、映画としては戦火の中での許されない恋を描くというメロドラマ的な展開なので、すんなりとストーリーも理解できます。
他の映画を観れていないのは残念なんですが、個人的には好きな監督になりそうな気がします。

ファスビンダーは作中にも役者として登場します。
反ナチス組織の指導者として、全くカリスマ性を感じない指導者ぶり。
この登場人物が出てきた時点で、なんだその似合わないサングラス?と思いながら、違和感を感じて観ていたら、鑑賞後にファスビンダーと知り、ちょっと笑いました。

3.評価

個人的な好き度合い:☆☆ (1/3)
※ ★☆☆~★★★が凄く面白いで、普通に面白い以下は全て☆☆☆です。

結構なメロドラマなので好き嫌いは分かれると思いますが、個人的には好きです。

世間の評価は以下のような感じです。

Filmarks3.5
映画.com3.5

面白いという方の意見:

・ハンナ・ジグラの歌うリリー・マルレーンが心に沁みる。
・戦時中のナチスドイツの横行ぶりがよく伝わってくる。
・歌による戦意の鼓舞と代わりに失われていく命、その対比が絶妙。

面白くないという方の意見:

・脚本がファスビンダーでない分、他の作品より熱量が低い。
・マレーネ・ディートリッヒが歌うリリー・マルレーンに比べるとちょっと見劣りする。
・ハンナ・シグラに美しさを感じない。というか役の年齢と釣り合わず違和感が。

世間の評価を見ての印象:

ファスビンダー監督はかなり毒の強い映画を作られるようで、他と比べるとこの作品はかなり無難な仕上がりになっているようです。
毒というのは食らってみなければどんな物かも判らないので、是非是非、機会があれば観てみたいです。
amazon primeで『ファスビンダーのケレル』が観れそうですが、評判が良ければ観てみようと思います。

映像は、強めの照明にかなり癖がある方とのことです。
かなり原色、特に赤がべったりとした映像という雰囲気でしたが、確かにスポットライトが局所的に当たるというか、頭に残っている映像もそんな感じですね。
ますます、そこを意識してファスビンダー映画を観返したい所です。

4.お勧めしたい人

こんな方にはお勧めの映画かも知れません。

・戦争で引き裂かれる男女の話を観たい人。
・会いたくても会えない男女にふるえる人。
・芸術寄りの映画。
・歴史を扱った映画が好きな人。

amazonでBlu-ray・DVDを購入する。

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