映画感想『勝手にしやがれ』

『巨匠を観る』企画、6作目(全27作)の映画です。

1.映画情報

作品名:勝手にしやがれ(À bout de souffle)
ジャンル:犯罪 恋愛
鑑賞履歴:2021/8/5(U-Next)
公式サイト:
wikipedia:wiki
監督:ジャン=リュック・ゴダール
制作年:1960年
制作国:フランス
上映時間:90分
配給:新外映配給
メインキャスト:ジャン=ポール・ベルモンド ジーン・セバーグ ジャン=ピエール・メルヴィル
スタッフ:脚本(ジャン=リュック・ゴダール) 原案(フランソワ・トリュフォー)
原作:
受賞歴:第10回ベルリン国際映画祭 銀熊賞(最優秀監督賞)
予告動画:

ゴダールによるヌーヴェルヴァーグの傑作!映画『勝手にしやがれ』予告編

2.あらすじ

警察官を殺してしまったフランス人のミシェル。
捜査の手が迫る中、ミシェルはパリに住むアメリカ人、パトリシアを誘いローマに行こうとする。
パトリシアはミシェルの本心を掴めずに拒むが。。。

ヌーベルバーグの金字塔として映画史に輝く名作。

3.感想

※※※ 以下、ネタバレありです! ※※※

20年ぶりにこの映画を観ました。
古い白黒映画というイメージからは程遠いキラキラした映像、開放的で、何よりポップで楽しそうな雰囲気。
役者の演技も自然で日常的な雰囲気、ストーリーを無視したかのように大きなドラマに向けて過剰な演技や音楽、演出もない。
フィルムノワールの定型は残しつつ、それと程遠い言葉で進める会話劇。
なにより、落ち目のフランス映画界に一石を投じる映画のヒロインを、アメリカ人が演じることが大胆で挑戦的。

けれどやっぱり好きになれないゴダール臭。
そこら辺のボンボン映画監督とは育ちも感性も違うと言いたげな鬱陶しさに、「この浅知恵のガキが!!」とキレたくなったのは僕だけではないと信じたいです。

主人公は見事なまでにフォローのしようもないようなクズ男、ミシェル。
スリから、詐欺から、盗みから、殺しまで、悪い事なら何でもやっている。
女好きで、良心の呵責もなく、息を吐くように嘘をつき続ける。
あと10年遅ければ薬も相当やっているんだろうけれど、馬鹿みたいにたばこは吸うが薬はやっていないので意外に健康的な見た目のチンピラ。

オープニングは良かったです。
車盗んで、田舎道をぶっ飛ばしながら鼻歌歌って、警察官に追い詰められたと思ったら直ぐに発砲するカットで殺人、そして逃走。
ここまで5分程度、躍動感のままに、人物紹介から起承転結の”起”まで一気に終わらせてしまう展開に、凄いこの映画!と、かなりときめいて観ていました。

そこからジーン・セバーグが演じるパトリシアが出てくるまでも素晴らしいし、ショートカットのジーン・セバーグの可愛らしさにかなり釘付けになりました。
もう、この人を好き放題撮りたくてこの映画撮っているでしょ?と言いたくなるようなカットばかり。
臨場感のある手持ちカメラで歩くジーン・セバーグも、ドアップのジーン・セバーグも何でもいい。
新聞社のTシャツ着ているだけなのにおしゃれ。

でも、この後、一夜明けて、パトリシアの部屋にミシェルが現れてからがひたすら退屈。
話をこじゃれ腐り散らしながらも、延々と続く二人の会話劇に、うんざりし始める。
詩的な表現と直接的な表現を織り交ぜつつ、パトリシアが落ちていく様を描きたいんだろうか?
それとも、こんなミシェルみたいな男が本気で恋に落ちて必死になっていく様だろうか?
もしくは、詐欺師の口説きテクニックをカンパニー松尾並みに描き抜こうとしているんだろうか?
まぁ、犯罪というストーリーの本筋との対比が主ではあるんでしょうけれど。
ただ、僕がゴダールで苦手なのはこの会話劇なんだろうな。と思います。
あまりにも情念がなく、言葉が上滑りしている感覚。
そして恐ろしい程の、会話をする人間達の物分かりの良さ。
パトリシアに臆病と言う言葉だって、成瀬巳喜男なら『乱れる』の中で一時間以上も時間を掛けて情念たっぷりに表現しているのに。
それが、まぁ、この映画では良く判らないままに言葉がポンポン飛び交う事。
途中からセリフを脳内変換で大阪弁にして、無理矢理、情感を高めて読み解こうともしましたが、なんというか、面倒になって止めました。

その後は、ストーリーも動き出し、ジーン・セバーグのファッションも2変化くらいしながらアクションとして楽しめる展開でした。
こうして、話が動いてくれれば楽しいんですけどね。
ミシェルが言葉を発する度に、面倒臭い気分になりつつラストまで。
意外に逃げようとしないミシェルの「逃げるの疲れた!」宣言にも、あまり共感する気持ちにもならない。
けれど、背中を撃たれてよろよろと歩き続けるミシェルのラストはなかなか見せるカットでかっこよかったです。

それにしても最後までひたすらお洒落な映画ではありましたね。
多くの方が知っている通り、ヌーベルバーグの金字塔のような作品。
街撮りの解放感と、絵になるカットの多さはかなり目を惹きます。
汚いごろつきの世界を撮っているのに、清潔感のあるカットばかりになる不思議感も凄い。
音楽も最低限でセンスもよく、ファッションもジーン・セバーグは今の時代でも十分にかっこいい。
ジャン=ポール・ベルモンドは全然だったかな。
変なネクタイしてるし、ジャケットも肩が余ってダブダブだし、そんな演出なのかな?
あとは、セリフだけが個人的にダメな映画でしたね。

この先、ゴダールを何度観る機会があるか判りませんが、いつか自分の印象を覆すような作品に出合うことがあるんだろうか?と思いながら、とりあえず今の段階では苦手な監督という事がよく判った映画でした。

4.評価

個人的な好き度合い:☆☆ (0/3)
※ ★☆☆~★★★が凄く面白いで、普通に面白い以下は全て☆☆☆です。

20年ぶりに観ましたが、自分にはダメなんだよ。ゴダールは。

台詞を聞いてるだけで観る気を無くすんだよ。

世間の評価は以下のような感じです。

Filmarks3.8
映画.com3.6
amazon4.3

面白いという方の意見:

・若く自由な監督による瑞々しい映像に目を奪われる。
・映し出されるパリの風景が新鮮で、そこを歩いているかのような錯覚を受ける。
・今観ても新しい発見の多い映画。
・ラストシーンのセリフが秀逸。
・ベルモンドのチンピラ感がかっこいい。破滅的な生き方にも憧れる。
・ジーン・セバーグの美しさが際立っている。

面白くないという方の意見:

・心に残る演技も・台詞も・場面もなく、意味が掴みかねる
・感覚の合わない映画。
・ストーリーもつまらなく眠かった。
・即興的な耳障りの良い言い回しに意味を見出せ。という無茶を強いる。

世間の評価を見ての印象:

本当にこの映画って人気あるんだな。というのが普通に驚きました。

それにしても、関西弁で翻訳して出してくれないかな?
関西とは縁もゆかりもないけれど。

amazon prime videoで観る。

※視聴不可です。
 U-Nextであれば観れます。

5.お勧めしたい人

こんな方にはお勧めの映画かも知れません。

・映像美を感じられる映画。
・映像がスタイリッシュな映画。
・芸術寄りの映画。
・ファッションを楽しめる映画。
・詩的な雰囲気の映画。
・ラストシーンが最高にいい映画。
・ダメ男に惹かれる女性の人。
・救いようのないクズが主人公の映画。
・犯罪を扱った映画が好きな人。

amazonでBlu-ray・DVD・原作を購入する。

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